大人の恋は波乱だらけ!?

「相当……悩んでいるみたいだな」

「……分かりますか?」

「分からない方がおかしいさ」


高梨部長は苦笑いを浮かべると私に向かって手を伸ばした。
ポンッと小さな音を立てて頭の上に高梨部長の大きな掌がのった。


「高梨ぶちょ……」

「無理は禁物だ。
今の状態じゃあ……いくら考えてもいいアイディアは浮かばないと思うぞ」

「それは……」


高梨部長の言葉は的を射ていて何も言えなくなる。
確かにこのままではゲームの完成どころではないだろう。
シナリオが出来ないとなると、他の社員にも迷惑が掛かる。

それは十分、分かっているつもりだ。
早く完成させないと、という焦りが空回りしている事も理解している。

でも……分からない。
そもそも【大人の恋愛】ってなんなの?

シナリオを書けない自分が凄く悔しい。
奥歯を噛みしめながら俯けばポンポンと頭を叩かれる。


「……桜木、今日空いてるか?」

「え?空いてますけど……」

「よしっ、飲みに行くぞ」

「え……あの……」


いきなりの展開に驚きながらも顔を上げればニッと口角を引き上げる高梨部長が目に映った。


「気分転換だ、パーッといくぞ」

「高梨部長!?」


私の返事を聞く事なく高梨部長はオフィスを出て行った。