大人の恋は波乱だらけ!?

「俺なんかの為に泣くなよ……」


哀しそうな彼の顔を見た瞬間、私の手は無意識に動いていた。


「っ!?」


パチン、と乾いた音が響く。

目の前には驚いた顔の高梨部長。
その左頬はほんのりと赤くなっていた。


「私は……貴方が社長の息子だとか、それを隠し続けてきたとか……。
そんな事はどうだっていいです!
だけど……自分の事を……“なんか”なんて言葉で表さないで……」


自分の右手をぎゅっと握りしめる。

ジンジンと痛む手が心をも痛めていくような気がした。

上手く伝えられない事が悔しくて。
それでも伝えたくて。

ゆっくりと右手を開き彼の左頬に触れる。


「高梨部長は……誰よりも社員を愛して、仕事を愛して……。
凄く素敵で輝いていて……そんな貴方を私は好きになって……傍に居たいって思ったんです。
貴方の力になりたいって!
それなのに……自分を否定しないで下さい……高梨部長は高梨部長です。
誰かの息子とか関係ない……関係ないです……」


ゆっくりと伝えた私の気持ち。

彼に伝わったかんて分からない。

でも、いいんだ。

高梨部長の頬から手を離そうとした時、彼はそれを阻止する様に私の手に自分の手を重ねた。