「桜木……何でお前が泣くんだ……?」


私の顔なんて見えていないはずなのに……。
高梨部長はすぐに私の異変に気が付いてくれる。

戸惑った様な声は私の涙腺を刺激するんだ。
貴方が苦しんでるはずなのに……。
何を心配を掛けているんだ。

私はクイッと口角を上げて笑顔を作った。


「高梨部長……ごめんなさい……」

「え……」

「貴方の苦しみに気が付いてあげられなくて……。
高梨部長の傍にいたのに……私は何も出来なかった……」


笑顔を作ったはずなのに、無理やりあげた口角がプルプルと震えていく。
これ以上、貴方に迷惑はかけたくないのに。
……涙が止まらないんだ……。


「……なんで……何でだよ……」


震えた彼の声。
その数秒後、私の目の前には高梨部長の顔があった。
眉間にシワを寄せて、怒った様に私を見つめている。


「高梨部長……?」

「俺はお前に、社員に……ずっと嘘を吐いてきた!
なのに何でお前は怒らないんだよ!
何で謝るんだよ!桜木は何も悪くないだろ!?
俺の……俺なんかの……」


高梨部長は震える手で私の両肩を掴む。