「私を傷付ける……それだけの為に……明美は高梨部長の事をバラしたの……?」

「そうよ!それ以外ないでしょ!?」

「高梨部長に悪いと思わなかったの!?」


明美だって高梨部長とそれなりに関わってきたし、全く無関係って訳じゃない。
だから、彼の人柄もよく知っているだろう。

それなのに……。
どうして彼を傷付けるの……?


「別に何とも思わないわ!
アタシはただアンタにも同じ苦しみを味わって欲しかったの!
スバルさんの事で苦しんだアタシと同じくらいに!!」

「痛ッ……」


突き飛ばされた拍子に尻餅をついてしまう。

だけど、そんな事はどうだっていいんだ。

今の私にあるのは……。


「……最低だよ明美」


哀しみだけなんだ。


「は?」

「私の事を傷付けたいならそれで構わない。
だけど、他の人は巻き込まないで!高梨部長を傷付けないでよ!」


彼はもうこれ以上、苦しまなくていい。
苦しむ必要なんてない。

私は明美に背中を向けて走り出した。
ただ一心不乱に。