「……次は新キャラの“リュウ”の事なんだけど……。
金髪の色の具合を確認して欲しいの……」

「あっはい!
そうですね……“シン”よりは暗めにして欲しいです。
あと、“リュウ”の吊り目具合は前作の“コウ”を参考にして頂ければ……」


パソコンには金髪の男の子のキャラクターが映されていた。
その背中には漆黒の翼が生えている。
それを見ながら思った事を言っていく。
ノートにメモをする先輩に合わせながら話していれば『ありがとね』と素敵な笑みを浮かべてくれた。

白石 景子(しらいし けいこ)先輩は高梨部長の同期で、まだ駆け出しのシナリオライターの私にも色々とアドバイスをくれる優しい先輩だ。
おまけに美人で仕事も出来る。
私にとってはお姉さんの様な存在と言ってもいいだろう。

これは私だけが思っているだけではなくて、社内でも姉と妹の様だと有名なのだ。
景子先輩自身も私を妹の様に可愛がってくれている。

私は兄弟がいない為、嬉しく感じていた。


「……こんな感じでどうかしら?」

「あっ……」


景子先輩が手直ししてくれた“リュウ”は私が思い浮かべていたものと瓜二つだった。
自分が考えたキャラクターがこうして出来上がると何とも言えない感動が込み上げてくる。
初めての事じゃないけど何度味わっても嬉しさは変わらない。
ニヤけるのを必死で我慢していれば、クスリと小さな笑い声が聞こえてくる。


「葉月ちゃんって本当に仕事が好きなのね」

「え?」

「キャラが出来ると凄く嬉しそうな顔をするもの!」


景子先輩に言われると凄く恥ずかしくなる。
そんなに顔に出ているのかな、軽く頬に振れれば口角がこれでもかってくらい上がっていた。