「正直、眠れてないですね……。
夢にまで大人の恋愛ゲームの事が出てきますもん……」

「夢……どんな夢だったんだ?」


高梨部長の言葉に夢の内容を思い出してげんなりしてしまう。
思い出すだけで胸やけをおこしそうだ……。
そんな私の想いをつゆ知らず、首を傾げ続ける高梨部長。


「縁側で老夫婦がお茶をしていて」

「老夫婦?」

「はい。
それで何故かその間に私が座ってて、2人からおはぎと餡蜜を永遠に食べさせられる夢です」

「……もはや【大人の恋愛】でも何でもないな」


苦笑いを浮かべる高梨部長の横で私はタメ息をついた。
何もいいアイディアは浮かばないし、夢でも襲われるし……。


「私……本当に出来るのかな……」

「桜木……」

「え?あっ……何でもないです!」


心の中で呟いたつもりが口に出ていたみたいだ。
驚いたような表情の高梨部長に向ける言葉が出てこなかった。


「葉月ちゃん!
【恋した悪魔】の事でちょっと相談があるんだけど今いい?」


同じ部署の女の先輩に呼ばれハッとした様に立ち上がる。
チラリと高梨部長を見れば『行っておいで』と優しい笑顔を向けられる。
軽く挨拶をして、呼んでいた先輩の方へと急いだ。

絶妙なタイミングで呼んでくれた先輩には感謝の気持ちでいっぱいだった。