「じゃ……邪魔しちゃ悪いしさ」

「そんな事気にしなくていいから!ねっスバルさん」


笑いながら昴さんに訊ねる明美。
そんな明美に偽りの笑みを浮かべて、私を見つめた。


「勿論、葉月、座りなよ」


完璧なくらいに爽やかな笑顔。
それが偽りだなんて誰にも分からないだろう。

でも、私をどん底に落とすには十分すぎた。

今まで一緒に過ごしてきて。
少しは距離が近付いたと思った。

だけど……。

この偽りの笑顔を見た瞬間、私と彼には大きな溝があるって改めて思い知らされた。


「……っ……」


そんな事、最初から分かっていた。

私は別に昴さんと仲良くなりたい訳じゃない。
勿論、特別な仲になりたい訳でもない。

でも……。
自分で思っている以上に……。
私は昴さんと一緒にいる事が好きだったんだ。


「ちょっと葉月!?」


気が付けば私は走りだしていた。

後ろから心配そうな明美の声が聞こえるけれど。
今は振り返る余裕すらないんだ。