大人の恋は波乱だらけ!?

「本当は無理なんだろう?【大人の恋愛】をテーマにしたゲームを作る事」

「えっと……」


何て答えて良いか分からず言葉を濁していれば、背中に回っていた高梨部長の腕の力が強くなる。
力は強いはずなのに痛くはない。
多分それは、高梨部長の優しさが分かるからだと思う。


「お前が今まで作ってきたゲームも、小説も。
俺が知る限りじゃあ女子中学生や女子高生、上でも大学生をターゲット層にして作られていた。
それをいきなり変える事なんて難しいはずだ。素人の俺でもわかる。
それなのに……」


抱きしめられていた体が少しだけ離されるが近い距離には変わりはない。
しかも、真っ直ぐに見つめられている。
高梨部長の真剣な目つきに捕らわれると逸らす事が出来なくなる。


「……何でそんなに強いんだよ……」


哀しそうに揺れる瞳は私の心の奥深くを抉るようだった。
鋭い刃物で刺されたような痛みが胸に広がる。

高梨部長は何か勘違いしているに違いない。
私は強くなんかない、強かったら夢からも逃げないし……。
高梨部長に守って貰ってばかりなんかじゃないと思う。

私は弱いから、だから……。


「強いのは高梨部長ですよ。
自分の立場が危うくなるかもしれないのに……
私の為に社長に意見をしてくれました。
その優しさや強さが……私は凄く羨ましいです……」


僅かにぼやける視界が、自分の弱さを表している様で……。
意地でも“涙”を流す訳にはいかなかった。

必死に我慢しているお蔭で目の奥は熱くなるが泣くまでには至らなかった。
その代わりに唇がプルプルと小刻みに震えだした。