「ほら葉月、お前からも言え。アイツに『私と別れて』ってよ」

「っ……いやぁ」


骨が軋むんじゃないか。
そう思うくらいに強く抱きしめられる。

痛いのに、離れたいのに。

何でだろう。
離れたくないの。

訳の分からない感情が胸に取り巻く。

その時。


「桜木は貴方なんかに渡さない」


肩を掴まれて、半ば強引に昴さんから引き離された。

倒れかけた私の体を優しく抱きしめると、高梨部長は小さく笑った。


「お前は何も心配しなくていい」


耳元でそう囁かれる。
自分の後ろに私を隠すと、私に向けた優しい声とは全く違う低い声を出すんだ。


「卑劣な手でこの子を惑わさないで下さい。
桜木が好きなら……正々堂々と俺と闘え」


真っ直ぐな視線を昴さんに向ける。
でも、彼は高梨部長を鼻で笑うだけだった。


「俺がコイツを好き?
笑わせるなよ俺は誰も好きになんてならねぇ。
女は道具だ、それだけだ」

「……本気で言っているのか……?」

「は?」

「貴方は……自分でも気が付いていないんですね……」


同情をする様な目で昴さんを見る高梨部長。

昴さんは不快そうに彼を見ていた。