時刻は7時過ぎ。

時間が経っても、私の心は晴れてはくれなかった。

頭には昴さんの哀しそうな顔が浮かんで。
油断するとすぐにタメ息が出てしまうんだ。

それでも、約束があった私は居酒屋に来ていた。

今はいつもの3人で飲んでいる最中だ。


「っで?何で俺たちを呼び出したんだよ。
……しかもかなり強引に」


呆れた顔をする友輝をよそに明美はニヤケ顔を披露していた。


「んーまあいいじゃん!後でのお楽しみだよー!」

「何だよそれっ……」


2人の会話に口を挟むことなく1人でお酒を飲み続ける私。

そうでもしなきゃ、やってられなかった。

だってそうじゃん。

昴さんってば、いきなりキスしてきたくせに。
自分が傷ついてるみたいな顔して。
驚いているのも、傷つくのも、私の方なのに。

思い出せば思い出すほど、ムカつきに変わっていく。


「あーもう!お代わり!!」


ドンッとグラスを置けば友輝と明美の驚いた顔が目に映った。


「なによ」

「お、おい……どうしたんだよ……」

「葉月ってば今日おかしくない……?」


心配そうな2人を見ながらグッと拳を作った。

おかしい?
私は至って普通だよ。


「おかしいのはアイツの方だっつーの!!」

「ひっ!?」


もう1度グラスをテーブルに叩きつければ2人は怯えた様に私を見ていた。
そこで、ふと我に返る。


「……ごめん、何でもない」

「何でもないって感じじゃ……」

「明美、黙ってろ。
葉月、今日はトコトン飲めよ!」


友輝はにっと笑うと、店員さんに私のお酒を頼んでくれた。