大人の恋は波乱だらけ!?

「踏まれちゃったみたいで少し足跡が付いちゃってるんですけど……すみません……」

「そんな事どうでもいいです!
良かった……大切なモノなんだ……」


男の人は大事そうに茶封筒を受けると優しく目を細めた。
間近で見る爽やかな笑顔に胸がときめくのが分かる。

破壊力があるその笑顔に女の人なら誰もがノックアウトされるだろう。
私の場合は高梨部長の笑顔で大分、免疫が付いているから大丈夫だけど……。


「届けられてよかったです。
……では私はこれで」


ペコリと頭を下げその場を去ろうとすれば、いきなり手を掴まれる。
この場には私とこの人しかいない訳で……。
当然、手を掴んだのは男の人なんだろうけど……。


「あの……」


何か用事でもあるのだろうか、そう思ったが初対面の人間に用事なんてある訳がない。
考えても答えは出ずに呆然と男の人を見上げる。


「あっ……お礼をさせて欲しいんですけど……」


驚き気味の表情を浮かべながら弱々しく発せられる言葉。
何故そんな顔をしているのか気になったが、特に突っ込む事はせずに小さく首を横に振った。


「そんな必要ありません、私が勝手にやった事ですから!
……っと……そろそろ行かなくちゃいけないので失礼します!」


男の人の手を優しく離し、軽く会釈をする。
驚いたままの男の人をホームに残して私は改札口へと急いだ。
チラリと後ろを振り向けば男の人は自分の手を見ながら固まっていた。