大人の恋は波乱だらけ！？

「お前はいつも1人で頑張りすぎだ。
社長に啖呵切ったり、仕事の為とはいえ、他の男の家に住んだり……。
桜木はいつも俺の想像を軽く超えていく」

「うっ……」


何も言い返せず言葉に詰まってしまう。
高梨部長の言っている事は事実だし、いい訳なんてする気もない。
だけど彼に心配を掛けている事も、また事実だ。
俯きかけた顔が、ふいに止まる。
彼の言葉によって。


「でも、そんなお前だから目が離せない」

「高梨部長……？」


彼に目を向ければ、揺れる瞳が私を見つめていた。
何かを堪える様な、でも、真っ直ぐな瞳。


「普段は温厚で争いごとを嫌うタイプなのに、仕事の事になると熱くなって……。
いつも一生懸命で、キラキラと輝いている、そんなお前を俺は支えたい」

「あっ……」


真剣だった彼の目はゆっくり細まり、三日月を描いていた。
柔らかく、彼にピッタリの雰囲気が滲み出ている。

口を開く時間も惜しいくらい、彼の笑顔を見ていたかった。
2人だけの空間、そう思うくらいに周りの音なんか一切聞こえない。
決して大袈裟な事じゃない、それくらい私は彼に見惚れていた。


「これ、飲んでみて」


そう言って差し出すのは、さっきマスターが彼に渡した高梨部長が作ったカクテルだ。
でも何故だろう。
そのカクテルなら私の手元にあるのに……。
そう思ったが彼の言う通りにする事にした。
グラスを受け取り喉に流し込むが、すぐにその異変に気が付く。


「あ……甘くない……」


驚いた私は自分の方にあったカクテルを飲む。
だけど、結果は同じだった。

どうして？
さっきはあんなに甘かったのに……。

驚く私を見ながら高梨部長は笑顔で説明してくれる。
その顔はまるで、タネ明かしをするマジシャンの様だった。