大人の恋は波乱だらけ！？

「スバル……？」


女性は目を大きく見開きながら彼を見つめていた。
恐らく、初めて見る昴さんに言葉が出ないのだろう。

と、言うか、大丈夫なの？
本性とまではいかないが、いつもと違う彼を見せてしまって……。

自分の事ではないのに少し心配になる。
それは私と彼の妙な関係からなのかは分からない。
だけど何となく放って置けなくて、めいいっぱいに手を伸ばして1つ空席を挟んで座っている昴さんの裾を引っ張る。
勿論、彼女に見つからないようにそっと。


「……っ！！
えっと……彼女とぶつかったのは僕です。
だからカオルさんが気に病む事ではありません。
でも、心配して下さってありがとうございます」


我に返った昴さんは、いつもの爽やかな笑みを浮かべながら対応をしていた。
これで一安心だ、胸を撫で下ろし彼達から視線を逸らそうとした時、昴さんがこちらに目を配らせた。


「……」


その顔は笑顔でも怒りでもない。
いつか見た時と同じ、戸惑った様な顔。
そんな彼を見ていると、さっき感じたのと同じ痛みが胸に走る。
ズキンズキンと締め付けられる胸の痛みは何が原因かは分からない。


「スバルがそう言うなら……」


まだ不満そうな声だが、渋々と言った様に女性は頷いた。
でも、彼女が私を見る目は鋭くて、思わず苦笑いを浮かべてしまう。


「桜木、もう気にするな」


彼女の視線に気が付いたのか、高梨部長は私の肩を抱き寄せ自分の方を向かせる。
彼の腕はもう離れていたけど、必然と縮まった距離にトクンと胸の奥が高鳴った。


「……はい」

「よっし、飲みなおすか」


私が笑えば、高梨部長も笑顔を浮かべる。
彼と一緒にいると、さっきの胸の痛さを忘れさせてくれる。
だから、後ろから感じる視線に気が付かないフリをした。