大人の恋は波乱だらけ！？

「げっ……」


自分でも驚く位に顔が引き攣ったのが分かった。
私の視界には昴さんと女性の背中が映っている。


「ココにしましょう！」

「ええ、分かりました」


そんな会話が聞こえ、私の顔は益々、引き攣ってしまう。
その理由は明確だった。
少し視線を横にずらせば、見慣れた後ろ姿がある。
その背中の主は視線に気が付いたのかゆっくりとこちらを振り返った。
パチリと目が合うと、優しい笑顔を向けてくれる。


「桜木！」

「……お待たせしました、高梨部長！」


彼の元へ駆け寄ると、横から痛いくらいの視線が向けられる。


「あ、アンタ！さっきの失礼な女！」


私を指さしながら、何とも不名誉な呼び方をするのはブロンドヘアーの女性だ。
苦笑いを浮かべながら『どうも』と頭を下げれば女性は何とも恐ろしい目つきで私を見ていた。
なるべく関わらない様にと、椅子に座れば分かりやすいくらいに嫌な顔をされる。


「何でそこに座るのよ！」

「な、何でと言われましても……」


さっきまで自分が座っていた場所に座って何が悪いのか。
そもそも、貴方たちが後からそこに座ったのでしょ？
決して口には出さないが、不満は募っていく一方だ。


「あの、彼女が何か？」


私を助ける様に、口を開いたのは高梨部長だった。


「何か、じゃないわよ！アタシの彼氏にぶつかっといて見惚れてたのよ！」


ヒステリックに叫ぶ女性に頭を抱える。
ぶつかったのは事実だが、間違っても見惚れていた訳ではない。
高梨部長に誤解されたくないが、説明するとしても複雑だ。