高梨部長の所へ戻ろうと早足で歩いていたら足元にあった段差に気が付かず躓いてしまう。
その反動でフラフラと体がよろけて、何かに思いっきりぶつかった。
「おっと……」
頭の上から声が降ってきて、私がぶつかったのは人だと分かる。
慌てて離れようとするが鼻を掠める香りが凄く嗅ぎ覚えがあって一瞬だけ動きが止まった。
どこか安心する香りが私を包み込むが我に返ったように離れる。
「すみませ……」
顔を上げた瞬間、謝罪の言葉は消え去っていく。
ポカンと口を開けたまま私がぶつかった人を見上げていた。
道理で匂いに覚えがあったのかと理解する。
目の前の男も同じ様に驚いた表情をしながら私を見降ろしている。
「ちょっとアンタ!ぶつかっといて何ガン飛ばしてるのよ!」
ひょこりと、彼の横から顔を出すのはブロンドヘアーが良く似合うハッキリとした顔立ちの女性。
彼の腕に細長い手を絡ませて私を思い切り睨んでいた。
「本当にすみませんでした」
別にガン飛ばしていた訳ではないのだが、と、心の中で呟き頭を下げる。
私と女性のやり取りが行われている最中も彼は私を見つめていた。
「謝って済むと思って……」
「カオルさん、僕は大丈夫ですから。
お怪我はありませんか……?」
凄い剣幕の女性を遮り優しい笑顔を浮かべる男。
その笑顔が偽りだと知っている私は、少し複雑な思いを抱えながらコクリと頷く。
「よかった」
「もう行きましょう」
柔らかく微笑む男とは対称に怒りを露わにする女性は、去り際に鋭い目つきで私を睨んできた。
グイグイと力強く引っ張られているだろう男の背中を見ながら私はポツリと彼の名前を呟いた。
「昴……さん……」
彼の名前を口にした瞬間、ズキンと胸に痛みが走る。
それは今まで感じた事がないくらいの鈍い痛みだった。
その反動でフラフラと体がよろけて、何かに思いっきりぶつかった。
「おっと……」
頭の上から声が降ってきて、私がぶつかったのは人だと分かる。
慌てて離れようとするが鼻を掠める香りが凄く嗅ぎ覚えがあって一瞬だけ動きが止まった。
どこか安心する香りが私を包み込むが我に返ったように離れる。
「すみませ……」
顔を上げた瞬間、謝罪の言葉は消え去っていく。
ポカンと口を開けたまま私がぶつかった人を見上げていた。
道理で匂いに覚えがあったのかと理解する。
目の前の男も同じ様に驚いた表情をしながら私を見降ろしている。
「ちょっとアンタ!ぶつかっといて何ガン飛ばしてるのよ!」
ひょこりと、彼の横から顔を出すのはブロンドヘアーが良く似合うハッキリとした顔立ちの女性。
彼の腕に細長い手を絡ませて私を思い切り睨んでいた。
「本当にすみませんでした」
別にガン飛ばしていた訳ではないのだが、と、心の中で呟き頭を下げる。
私と女性のやり取りが行われている最中も彼は私を見つめていた。
「謝って済むと思って……」
「カオルさん、僕は大丈夫ですから。
お怪我はありませんか……?」
凄い剣幕の女性を遮り優しい笑顔を浮かべる男。
その笑顔が偽りだと知っている私は、少し複雑な思いを抱えながらコクリと頷く。
「よかった」
「もう行きましょう」
柔らかく微笑む男とは対称に怒りを露わにする女性は、去り際に鋭い目つきで私を睨んできた。
グイグイと力強く引っ張られているだろう男の背中を見ながら私はポツリと彼の名前を呟いた。
「昴……さん……」
彼の名前を口にした瞬間、ズキンと胸に痛みが走る。
それは今まで感じた事がないくらいの鈍い痛みだった。

