大人の恋は波乱だらけ！？

「お騒がせしてすみません」

「申し訳ありません」


私と高梨部長がマスターたちに頭を下げれば柔らかな笑みが返される。


「謝らないで下さい！お怪我がなくてよかったです」


何処までも優しいマスターやバーテンダーさんに感謝しながら席に座りなおす。
普通だったら、恥ずかしくて早く帰らなきゃ、と思うだろうが、マスターたちの気配りのお蔭で席を立たずにすんだ。
本当にいいお店だな、そう思っていれば高梨部長の手が私のブラウスに触れた。


「水で濡らしてきた方がいいかもしれないな。跡が残ったら大変だ」


心配そうに私を覗き込む彼。
自分の事の様に考えてくれているのが伝わってきて心が温かくなった。
だからか、『大丈夫ですよ』という言葉を呑みこんで素直に頷いた。


「そうですね。お手洗いで、濡らしてきます」

「ああ、気を付けてな」


ポン、と軽く私の頭を撫でると優しい笑顔で見送ってくれる。
彼の笑顔に癒されるのが分かる。
私は軽く頭を下げてお手洗いへと向かった。


「高梨部長の笑顔ってある意味凶器だよね……」


お手洗いに着いた私は、ハンカチを濡らし軽くブラウスを叩く。
その作業をしながらさっきの高梨部長の笑顔を思い出していた。
彼が笑うだけで周りの女性たちが騒ぎ出してしまう、酷い人なら倒れてしまうんじゃないかってくらいの影響を持っている。
だいぶ慣れたとはいえ、やはり近くで見るとドキドキする事に変わりはない。


「あっ……！！」


考え事をしていたせいで、さっきよりシミが大きくなっていた。
まあ、水だからいいか、と軽く考えながらお手洗いを出る。