大人の恋は波乱だらけ!?

「お前の小説を読んだ時、胸の中が一気に熱くなるのが分かったんだ。
上手く言えないが、その世界に引き込まれて行って、純粋にその世界を楽しんでいる自分がいた」


1つ1つ言葉を噛みしめる様に私に投げかける昴さん。
彼の言葉が自然に私の体へと染み込んでくる。


「才能があってもチャンスがなくて消えていった奴はそこら中にいる。
せっかく才能があるのに、何でもっと努力をしようとしない!?
何でチャンスを掴もうとしない!?そう思ったら何かもどかしくなってお前に当たっちまった」


昴さんの想いが私の心へと伸し掛かる。
きっと彼は私を励まそうとしてくれているのだろう。
才能の云々は夢を追いかけさせる為に言っているだけだ。
そう分かっているはずなのに、自分に才能があるはずないのに……。
彼の言葉が嬉しくて堪らない。
断ち切ったはずの小説への未練が一気に溢れ出てくるほどの破壊力があった。

それを振り払うために私はフッと口元を緩めた。
現実を見なければいけない、私に才能なんかない。
そう頭の中で何度も何度も繰り返し唱える。


「何を言っているんですか?
私に才能なんかある訳ないじゃないですか。
才能があるのは昴さんですよ」

「ふざけるなよ!
俺に才能があったらな、とっくに小説家になっている。
自分の才能も分からない奴が適当な事を言うんじゃねぇよ」


さっきまでの穏やかだった空間はもうどこにもなかった。
意地と意地のぶつかり合い、一触即発の空気がダイニングに漂っていた。

それでも私は1歩も引く事はしなかった。
下げていた頭をゆっくり上げて彼を見つめる。

鋭い目つきが私を捕えて離してはくれなかった。
まあ、私も逸らす事はしないけど。
その意を込めて昴さんを真っ直ぐに見つめる。


「……」

「……」


お互いに口を開く事はせずただ黙ったまま睨みあっていた。