大人の恋は波乱だらけ！？

顔を背けた時に彼の手が目に映った。
そこには車の鍵が握られており、今にも出掛けそうな雰囲気を醸し出している。


「あっ……出掛けるんですか……？」


自分でも自覚するくらい声が震えるのが分かった。


「あ……ああ」


やっぱり前もって約束しとけばよかったかな。
少しは予想していたけど、現実となると胸が痛くなる。


「気を付けてくださいね！」


それでも笑顔を浮かべて彼を見つめる。
心の奥に生まれた哀しさを押し隠す様に。


「……」


黙ったまま昴さんは私を見つめていた。
そして一瞬だけ顔を顰める。


「昴さん……？」

「……飯」

「はい？」

「飯作ってくれたのか？」


匂いがしたのか昴さんはダイニングを覗き込む。
私はヤバいと思い自分の体でテーブルを隠そうとする。
よりによって今日はハンバーグだ。
彼ならハンバーグの為に予定をキャンセルしそうだし、そうなれば誰かに迷惑を掛けてしまうだろう。
そんな私の頑張りも虚しく昴さんは私を交わしダイニングへと向かう。


「あっ！！」

「……ハンバーグ……」


昴さんはハンバーグに目を奪われていた。


「あ……えっと……冷蔵庫に入れて置くんで明日にでも食べて下さい！」


私がお皿を持とうとしたら、その手は優しく掴まれる。


「食う」

「え？でも出掛けるんじゃあ……」

「別に大した用じゃねぇよ。
それより、お前が作ってくれたんだ。
せっかくなら美味い時に食わなきゃ勿体ねぇだろ？」


そう言って昴さんは椅子に座った。


「本当に……大丈夫なんですか？？」

「ああ」

「でも……」

「しつこい、早く食おうぜ」

「……はい」


昴さんに促され私も彼の前の席に座る。