今の仕事は楽しいし、自分なりに誇りを持っている。
小説を書く事とゲームのシナリオを書く事は似ていてどちらもやりがいがある。

だから、仕事を辞めたい訳じゃない。
高梨部長にスカウトして貰った以上、彼の期待に応えたい。
その気持ちは入社以来、膨らんでいく一方だ。

だけど……。

ふと目を向けたのは少し大きめのプラスチックの箱。
あれは私の“宝物箱”と言ってもいいものだ。

小学生時代からノートやメモ帳に書き溜めていた小説がそこには入っている。
高校生くらいからはインターネットの小説サイトで書くようになったから最近は手書きで書く事はあまりなくなっていたけど……。
私の小説への想いが全て詰まっていると言っても過言ではない。

あれを見る度に胸が痛くなる。
夢から逃げ出した自分が情けなくて凄く悔しい。
その想いが日に日に増していっているのは自分で分かっているが、仕事にかこつけて目を逸らしてきたんだ。

だから……。

夢を諦めずに追い続けるあの人が羨ましい。
私の夢はもう叶わないから……。


「……頑張ってください」


いつか貴方の夢が叶います様に。

あの人の事は何も知らないけど、それでも応援せずにはいられなかった。