大人の恋は波乱だらけ！？

「……何も言う事はない。
どのキャラも、信念や歩んできた人生の道のりの重さが分かる。
前みたいな、年齢を重ねただけの人間じゃない。……よく出来ている」


昴さんは私に資料を返すと何かを言いたげな目で私を見ていた。
彼の口から言葉が発するのを防ぐように私は話し出す。


「昴さんが色々アドバイスをくれたお蔭です。
ありがとうございました！この調子で完成できるように……」

「どうして……」


私の言葉を遮る様に昴さんは弱々しく口を開いた。
私を見下ろす昴さんの瞳は哀しみに染まっている。
いつもの昴さんからは想像も出来ないその姿に言葉を失ってしまう。


「お前は、こんなにいいものが作れる力を持っている。
なのに……何で本来の夢を追いかけない！？
お前はシナリオライターより小説家向きだ。
文章でしか伝えられないことを表現できる力がお前にはある！！」


真っ直ぐな目が私を捕えた瞬間、脳裏には様々な想いが浮かび上がってくる。
小説家になりたいと夢を見てた時の想い、ただ素直に小説が好きだという想い。
夢を捨て今の職を選んだ想い、高梨部長と一緒にいいものを作り上げたいという想い。

そして、夢と現実の狭間で葛藤している想い。
私はまだ完全には夢を諦められていない、改めてそれを実感する。

揺れ動く感情が私の冷静さを失わさせていく。


「やめて……もう止めてください……」


ガクガクと震え出す体。
自分で抱きしめても震えは治まる事はない。
そんな私に追い打ちを掛ける様に昴さんの真剣な眼差しが突き刺さる。


「俺はお前が書いた小説が好きだ。
技術は粗削りだが、どんな有名な作家が書く小説よりも胸が熱くなる。
お前ほど“魂を宿したキャラ”を作れる作家を俺は知らない」

「止めて！！」


思わず声を荒げれば昴さんは驚いた様に口を閉ざす。
自分でも訳が分からず、頭では謝ろうと思っているのに口からは違う言葉が出てくる。