「ふぅ……疲れたー……」


お風呂を済ませ、後は寝るだけの状態になった私はベッドへと寝転がる。
このまま寝ちゃおうかな、そう思ったがふと頭にある人が浮かんだ。

バーで見かけたあの爽やかな男の人。
小説家を志しているって高梨部長が言っていたけど……。

同じ夢を志していたという事もあるせいか、あの人が頭から離れない。


「確か……“すばる”って呼ばれてたっけ……」


女の人があの人の事をそう呼んでいた気がする。
記憶を辿りながら、スマホを操作する。

【小説家志望 すばる】

インターネットの検索欄にそう打ち込むが、それらしいものは出てこなかった。


「凄いな……」


何歳かは知らないけど、夢を叶えるために努力し続けるって……
本当に凄い事だと思う……。

自分にはない勇気があの人にはある。
私は生活の事とか、就活の事とか……。
色んな事をいい訳にして夢を捨てた。

将来の夢より……安定を選んだ。

そう思うとギュッと胸が痛くなる。