「あのなー……。
……とにかく!気軽に男を家に入れるなよ!」


諦めた様にそれだけ言うと高梨部長は『じゃあな』といって階段を下りて行ってしまう。


「あの!
ありがとうございました!」


その背中に向かって言えば、高梨部長はゆっくりと振り返りニコリと笑顔を浮かべてくれる。
そして、私に背を向けるとヒラヒラと手を振る。


「ばーか、早く家に入れよ」


近所の事を考えてか小声で言う高梨部長にブンブンと首を横に振るう。


「見送らせてください」


高梨部長を真似て小声で言えば、一瞬だけ驚いた顔をするが直ぐにいつもの笑顔へと戻る。
車に乗り込むと助手席側の窓を全開に開けて覗き込む様に私に手を振ってくれる。
軽く頭を下げれば、ニッと爽やかな笑みを残して高梨部長の車は走り去っていく。