大人の恋は波乱だらけ！？

「わっ……どうしたんですか？」

「『どうしたんですか？』じゃないだろう！
この3日間、連絡が取れなくて、俺がどれだけ心配したと思って……」


背中に回っている高梨部長の腕が小刻みに震えている。
恐る恐る彼の顔を見れば、整った顔に似合わない隈が彼の眼下を支配していた。
かなり心配をさせてしまったらしい。
申し訳ない気持ちでいっぱいになるがその理由が分からなかった。


「あの……連絡って……」

「気付いてなかったのか！？あんなに電話をしただろう！？」


驚いた様に私から体を離す高梨部長。
彼に促される様にスマホを見れば着信が50回ほど入っていた。
その殆どが高梨部長だ。


「すみません、気付きませんでした。
そう言えば途中で充電が切れて、充電してから今まで開いてませんでした」

「あのな……いきなり目の前で彼女を連れ去られたら心配するに決まっているだろ！？」


高梨部長の言葉で私は『あっ』と声を漏らす。
そうだった、木曜日の夜に私は高梨部長の前で昴さんに無理矢理、攫われたんだった。
すっかりと忘れていた……。


「えっと……すみませんでした……。
本当に心配をおかけして……」


嫌悪感でいっぱいになる。
高梨部長がこんなにも心配してくれていたのに、自分から連絡をするどころか、掛けて貰った電話にも気が付かないなんて……。
しかも普通に楽しんでいたし、本当に最低だ私……。

言葉が見つからず謝る事しか出来なかった。
頭を下げる私に高梨部長の視線が突き刺さる。
彼が今どんな顔をしているか見るのが怖くて頭も上げられない。
そんな険悪な雰囲気の中で場違いな言葉が飛んでくる。


「葉月と高梨部長って付き合ってるの！？」


その声の正体は明美だ。
彼女がいるのをすっかり忘れていた。
高梨部長も想定外だったようで『……人がいたのか』と驚いている。