大人の恋は波乱だらけ！？

「お前は弱くなんかねぇよ」

「え……？」

「夢を捨てるって事は……夢を追いかけるよりずっと勇気がいる事だ。
その選択をしようとしているお前は誰よりも強い人間だと思うぜ」


彼はこんなに優しい性格ではなかったはずだ。
嫌味のひとつくらい鼻で笑いながら言うような人だ。
なのに何故……。


「何で……そんな事言うんですか……」


乾いたはずの涙がまた目に浮かび始める。
せっかく諦められると思っていたのに、前へ進もうと決断しようとしていたのに……。
そんなに優しい言葉を掛けられると心が揺らいでしまう。

涙を隠すように空を見上げ無理やり笑顔を作った。
また泣いている事なんて彼は知らないはずなのに、見透かしているかの様な言葉を放った。


「誰も見てねぇよ。
だから今は思いっきり泣いとけ」

「……」

「お前は普段から無理しすぎてんだよ。
自分の本当の気持ちを隠して、周りの事を想ってそっちを優先にして考える。
だから耐えきれなくなって気持ちが爆発しちまうんじゃねぇの？」


彼の言葉に耐えきれずに涙が溢れ出てくる。
初めは声を押し殺して泣いていたが次第に嗚咽に変わっていく。

昴さんの言う通りだ。
気持ちが爆発してコントロールが効かない。

泣きじゃくる私の横で昴さんは黙ったまま寝転んでいた。
昴さんはふいにぶつかった手を優しく掴むとそのまま強く握った。

大きな掌は私の手をいとも簡単に包み込んでしまう。
その手から伝わる温もりは凄く優しくて、涙腺を崩壊させるには十分すぎた。


「……」


握られた手に力が籠められる。
言葉はなかったけど、それは『無理するな』と言っている様に聞こえた。