「昴さんは……どうして小説家になろうと思ったんですか?」
暫く黙ったまま2人で海を眺めている時にふとその疑問が浮かんだ。
前にも同じような事を聞いたが、その時は答えを聞きそびれたから今度こそ聞きたかった。
そう思い、口に出せば昴さんは一瞬黙り込んだが直ぐに言葉を落とした。
「6歳の時だった、その時に出逢った1冊の絵本のストーリーが凄く好きで……。
誰かに幸せを与える様な話を自分で書きたいと思う様になった」
「そんなに昔から……」
「ああ。
それで17の時に初めて官能小説を読んだ。
そこから、その虜になって馬鹿みたいにその類の小説だけを書き始めた。
これがキッカケだ、つまんねぇだろう?」
自嘲じみた笑みを零すと昴さんはその場に寝転んだ。
「結局、その夢も叶わずじまい。
いい年して馬鹿みたいだって自分でも思うさ。
収入はゼロで女に貢がせて……くだらねぇ人生だって」
『でもな』と続けると昴さんはしかっりとした口調で言い放った。
「なりてぇもんはなりてぇ。ただ……それだけさ」
彼が見ている景色は私が見ている色褪せた世界じゃない。
夢を捨てて、妥協した中で得た幸せなんかじゃない。
女の人に貢がせるのは感心しないけど、彼が通っている道は誰よりも険しくて格好良い。
「くだらなくなんかないです」
「あ?」
「昴さんの人生は、凄く格好良いですよ」
被っていたパーカをどけて昴さんに笑顔を向ける。
涙はとっくに乾いていて、零れんばかりの笑みが私の顔を支配していた。
「……お前って……馬鹿だな」
口は悪いけど、声色はどこか優しくて
それはまるで昴さんそのものを表している様だった。
暫く黙ったまま2人で海を眺めている時にふとその疑問が浮かんだ。
前にも同じような事を聞いたが、その時は答えを聞きそびれたから今度こそ聞きたかった。
そう思い、口に出せば昴さんは一瞬黙り込んだが直ぐに言葉を落とした。
「6歳の時だった、その時に出逢った1冊の絵本のストーリーが凄く好きで……。
誰かに幸せを与える様な話を自分で書きたいと思う様になった」
「そんなに昔から……」
「ああ。
それで17の時に初めて官能小説を読んだ。
そこから、その虜になって馬鹿みたいにその類の小説だけを書き始めた。
これがキッカケだ、つまんねぇだろう?」
自嘲じみた笑みを零すと昴さんはその場に寝転んだ。
「結局、その夢も叶わずじまい。
いい年して馬鹿みたいだって自分でも思うさ。
収入はゼロで女に貢がせて……くだらねぇ人生だって」
『でもな』と続けると昴さんはしかっりとした口調で言い放った。
「なりてぇもんはなりてぇ。ただ……それだけさ」
彼が見ている景色は私が見ている色褪せた世界じゃない。
夢を捨てて、妥協した中で得た幸せなんかじゃない。
女の人に貢がせるのは感心しないけど、彼が通っている道は誰よりも険しくて格好良い。
「くだらなくなんかないです」
「あ?」
「昴さんの人生は、凄く格好良いですよ」
被っていたパーカをどけて昴さんに笑顔を向ける。
涙はとっくに乾いていて、零れんばかりの笑みが私の顔を支配していた。
「……お前って……馬鹿だな」
口は悪いけど、声色はどこか優しくて
それはまるで昴さんそのものを表している様だった。

