大人の恋は波乱だらけ！？

「さっ、着いたよ」

「本当にありがとうございます」


見慣れたアパートが窓の外に映り、高梨部長に頭を下げる。
シートベルトを外し、扉を開けようとしたらそれを遮る様に高梨部長は私の手を掴んだ。


「高梨部長……？」

「ちょっと待ってて」


それだけ言うと、高梨部長はニコリと笑顔を残して車を降りてしまう。
どうしたらいいのか迷っていれば、助手席の扉が小さな音を立てて開いた。


「さっ、どうぞプリンセス」

「た……高梨部長！！」

「悪い悪い！
お前、顔真っ赤だぞー？」


からかう様にニヤニヤとした笑みを浮かべる高梨部長を見ると頬が熱くなっていく。

“プリンセス”なんて呼ばれたら嬉しいけど恥ずかしいに決まっている。
それがサラッと出来る高梨部長は女性慣れしているに違いない。
そう思いながら、車から降りる。


「ここが桜木の家かー」


興味深そうにアパートを見る高梨部長に、カァーッと頬が熱くなる。
こんな高級車に乗れるような人から見たらこのアパートは小さすぎるだろう。

目の前に建つのは、2階建ての小さなアパートだ。
築5年で新しいがセキュリティなんて言葉は全く持って当てはまらない物件である。

自分では気に入っているが高梨部長に見られると少し恥ずかしい気もする。