大人の恋は波乱だらけ！？

「言葉足らずでごめんな？」

「わ……私こそすみません。
勝手に誤解して勝手に泣いて……」


恥ずかしい気持ちが広がり、まともに高梨部長の顔を見られない。
誤解した上に迷惑を掛けちゃって……何もいい訳が出来ない。


「……桜木」

「は……はい……」

「俺はお前には甘えられたいって思ってる」


フワリと優しく笑うと再び私を抱きしめる高梨部長。
焦りながらその胸板を押してもビクともしなかった。


「勿論、仕事は別だ。
俺はお前だから贔屓している訳じゃない。
いいものは採用するし駄目だったら不採用にする。
だから、自信を持て、お前はいつもいい仕事をしている」


高梨部長の言葉が純粋に嬉しかった。
『ありがとうございます』と小さくお礼を言えば、高梨部長はクスッと笑みを零した。


「お前はいつも真っ直ぐで、いいものを作ろうと努力して凄いと思う。
でもな、1人で頑張り過ぎなんだよ。
もう少し俺を頼れよ……」

「高梨部長……」

「俺さ……」


高梨部長が何かを言おうとした時、会議室にバイブ音が響き渡った。
驚いた様に私たちの体はパッと離れていく。


「わ……悪い、電話だ」

「い……いえ……」


高梨部長は私に断りを入れるとその場で電話に出た。
私はというと鼓動の高鳴りを押さえながら冷静に保つ事で必死だった。
好きな人に優しい言葉を掛けられたり、抱きしめられたりして恥ずかしくない訳がない。

それに……。
高梨部長がゲーム作りのためとはいえ、私と同じことを考えていたと思うと嬉しくなる。


「桜木」

「は……はい！」


いつの間にか電話を終えていた高梨部長は寂しそうに私を見ていた。


「悪い、会議がある事を忘れてたみたいだ」

「そ……そうなんですか。
すみません、お忙しい中、迷惑を掛けてしまって……」


ぺこりと頭を下げれば頭に軽く重みが与えられる。


「そんな寂しい事を言うなよ。
俺は迷惑なんて思ってない。
言っただろ？もっと俺に甘えろよ」


顔を上げれば寂しそうに笑う高梨部長と目が合った。
高梨部長は何気なくいった言葉でも、私にとってはすごく嬉しい物だった。