大人の恋は波乱だらけ！？

「わぁ……素敵な車ですね……」


目の前には黒い車が止まっていた。
駐車場には電気がある為、綺麗な黒色が際立っていた。

車に疎い私でも高級車だと分かる。
その数歩手前でオロオロとしていればクスリと笑みが聞こえてくる。


「桜木、ほら乗って」

「は……はい……」


サラリと助手席を開けてくれる高梨部長はまるで王子様みたいだ。
夢見がちな事を考えながら、車へと乗り込む。

静かに扉が閉められ、高級車に1人取り残される。
ほんの数秒の事なのに長く感じてしまう私は、庶民丸出しなのかもしれない。

私の家は、普通の一般家庭だ。
父はサラリーマンだし、母は専業主婦。
豊かではないが普通の生活はしてこれた。
でもこんな高級車には縁なんてないし、緊張するのは当たり前なのだが……。


「緊張しているのか？」


運転席が開いたと同時に『プッ』と吹きだす高梨部長。
顔に出ているのだろうか……。
恥ずかしくなった私は俯いてしまう。


「安心しろ、何もしないよ」

「え……？」


高梨部長の言葉の意味が分からず彼の方を向けばポンポンと頭を軽く撫でられる。
その手つきの優しさに固まっていれば、高梨部長は『あっ』と顔を紅めた。


「悪い、言った傍からやっちまった」


眉を下げる高梨部長の姿は怒られた子供みたいで、凄く可愛かった。