大人の恋は波乱だらけ!?

翌日、私は出勤すると直ぐにパソコンと向き合っていた。

昴さんが言っていた『まずはターゲット層を意識する事。
相手がどういう生活を送っていて何を求めているかを明確にする。
その為には相手を理解する、知り尽くす事が大切だ』という言葉が私の頭の中をグルグルと回っている。

彼は凄い人だ。
彼の言葉が私を突き動かしている。
それも無理やりじゃない、ちゃんと納得した上で私は行動しているのだ。


「出来た……!」


言うと同時に私は印刷ボタンを押しコピー機に向かう。
印刷したものを確認すると直ぐに高梨部長のデスクへと走った。


「高梨部長!」


焦る気持ちを抑えながら真っ直ぐに彼を見据える。


「桜木……?」

「お願いがあるんです」


印刷したばかりの紙を渡すと高梨部長は首を傾げながらそれに目を通していた。
でも次の瞬間、驚いた様に目を見開いた。


「これは……」

「シナリオを描く前に知っておくべき事を纏めてみました。
ターゲットとなる30代女性の事を知らずに作ったゲームなんて私の独り善がりです。
だから……知りたいんです、知った上で最高のモノを作りたいんです」


紙に書かれているのは30代女性に向けた質問だった。
日常のライフスタイルから好きなタイプ、譲れないもの、ことなど。
一見、ゲームとは関係ない質問まで書いたのは単純に知りたかったからだ。

ゲームに使えるかは別として……。
30代の女性が何を考え、何を求めているか、どんな恋愛がしたいのか……。
それが知りたいんだ。

相手の立場に立って考える事で新しく見えてくる事がある。
同じ方向から見たって何も変わらないもの。