大人の恋は波乱だらけ!?

「じゃあやるか」

「はい!」


涙を拭いノートを片手に昴さんの話を聞く。


「まず、お前が思う【大人の恋愛】は何だ?」

「それが分かったら苦労はしませんよ……」


昴さんから目を逸らし、いじける様に唇を尖らす。
そんな私に呆れた様にタメ息を吐いた。
その数秒後……。


「痛ッ!!」


頭に強烈な痛みが走る。
顔を向ければ昴さんの不自然に上がった手が目に映った。
た、叩かれた。

一瞬でそれは理解できたが驚きを隠せなかった。
何しろ昴さんは私に必要以上に触れようとはしなかったからだ。

男女の関係ではないから当たり前といえば当たり前だけど……。
意識的にスキンシップを避けていたと思えるくらいだったもの。

それなのに躊躇なく叩いた。
って事は……もしかして少しでも彼との距離が縮まったって事かな……?


「分からないからって考える事を止めるな。
……何笑ってんだよ?その笑顔気持ちが悪いぞ」

「何でもないですよ!」


本当にそうだとしたら……。
嬉しい、嬉しすぎる。

昴さんに言われた嫌味も気にならないくらい気分が良かった。


「頑張って考えます!」

「あ……ああ」


鼻歌を歌いながらも頭はきちんと動いていた。
大人の恋愛と子供の恋愛の違い……。
その2つは何が違うのだろうか……?


「まずは直感で言ってみろ」

「えっと……浮気とか不倫?
それと命がけの恋とかですか?」

「……」


それくらいのイメージしか分からない。
自信満々に言えば昴さんは顔を曇らせる。


「ち……違いましたか……?」

「そういうのをシナリオに組み込むのは悪くはない。
30代くらいの女は日常と非日常を求めているだろうからな」

「日常と非日常?」


首を傾げれば昴さんは分かりやすく説明してくれる。
しかも、私のシナリオの紙の余白に図を書きながら。

紙には2つの同じ大きさの円を1部だけ重なる様に。
左の円には日常、右の円には非日常と書かれている。