大人の恋は波乱だらけ！？

「昴さんこそ……何なんですか……」


呟く様に言えば『あ？』と返される。
心底驚いた様な顔をする昴さんの前で私も口を開けて固まってしまう。
心の声が漏れてしまった、1度口に出した言葉は元に戻る筈もなく気まずい空気を生んでしまう。
し……仕方がない、もう後戻りできないのならキッパリと言うしかない。
勇気を出して昴さんを見る。


「喋れ喋れって言われても……怒っている人に何を話したらいいかなんて分かりません！
って言うか何で怒っているんですか！
……訳も分からず怒らないで下さい……」


グッと手を握りしめながら俯く。
どうしよう、怖くて昴さんの顔が見えない。
それに怒鳴っちゃったけど……。
昴さんが怒っているのは気付いていないだけで私が原因かもしれないのに。


「あの……」


『ごめんなさい』と謝罪をしようとすればそれを遮る様に昴さんがタメ息を吐いた。


「本当にお前と居ると調子が狂う」

「え……？」

「俺の周りにいる女はペチャクチャと煩いくらいに喋り続ける女しかいなかった」


昴さんはそう言うと自嘲じみた笑みを零した。
髪を掻き上げながらポツリと呟く彼の表情は少し寂しそうに見えた。
何を言ったらよいか分からず黙ったまま話を聞く。


「俺が笑顔を浮かべているからってつまらない話を次から次へと聞かされてた、ウンザリするくらい。
だから喋られるのが普通で……静かなのが珍しくてどうしたらいいか分からなかったんだ」

「……」


声は小さかったけど昴さんの気持ちは伝わってきた。
彼にとってはそれが普通だったんだ。
だから少し戸惑っただけだよね？


「お前に強要させようとしちまって……悪かった」


謝る昴さんを見ながら私は首を横に振った。
昴さんは何も悪くない。


「謝らないで下さい！私こそごめんなさい」

「は？何でお前が謝るんだよ」

「だって……何も知らないのに怒ってしまって」


昴さんにとって当たり前の事だったのだからそれを求めるのは自然の事だ。
なのに私は知らなかったとはいえ怒ってしまったのだ。


「本当……変な奴」


呆れた様に笑うと昴さんは気まずそうに目を伏せた。
『変な奴』そう言った昴さんの顔は少し嬉しそうで、何故か私まで嬉しくなる。