「部屋を解約したら私はどこに住めばいいんですか!?」

「はあ?俺の家に決まってるだろう?」

「そ……そうじゃなくて!
【大人の恋愛】ゲームが完成した後です!」


当たり前のように部屋の解約や住民票の移動の事を考えていたが、ずっと昴さんの家に住む訳じゃないのだから解約する必要なんてない。
必要な物だけを持って彼の家に行けばいいのだ。
なのに……何故私は早く気が付かなかったのだろう。


「……何か勘違いしているようだが……」

「え?勘違い?」

「ゲームが完成してもお前が俺の家に住むという契約は変わらない」

「……はい?」


意味が分からず昴さんの方を向けば、不敵な笑みを返される。
身の毛がよだる、とは正にこの事だ。
身動き1つ取れずに昴さんを見上げる。


「お前はこれから先ずっと、俺の家で暮らすんだ。
……勝手に出て行くなんて許さねぇ……」


どこか苦しげな顔を浮かべる彼に言い返す事が出来ない。
何でそんな顔をしているの……?
考えても分からないのに、どうしても頭から離れてはくれない。

言いたい事は沢山あるのに、私の口から出た言葉は彼が言った事を容認するような言葉だった。



「……分かりました」

「……まあ、お前が好きな奴と結ばれる時が来たら解放してやるよ」


いつもの不敵な笑みなのに、その裏には悲痛の表情が隠されているような気がして私は何も言えなくなってしまう。
そんな私を一瞥すると、昴さんは自宅へと車を走らせていた。