「……」


車に戻った瞬間、彼は本性を剥き出しにガシガシと頭を掻きだした。
そして低い声で『疲れた』とシートに背中を預けている。
この車は中からは外が見えるが、外からは見えにくくなっている為完全に外の世界とはシャットアウトされている。
それもあり、彼は存分に素に戻れるのだ。

声を掛けようか迷っていれば昴さんは時計に目を向けて舌打ちをした。
ピクリと体を揺らしながら彼に目を向ければ低い声が車内へと落された。


「役所閉まっちまったじゃねぇか」


役所?首を傾げながらも1人で納得する。
住民票の移動とか手続しなきゃいけないのか……。
面倒くさいな、タメ息が出るのを我慢しながら考えていれば『あっ』とある事を思いつく。


「今日は土曜日だし役所はお休みですよ」

「……忘れてた、なら月曜日に手続に行くか」

「え……仕事……」

「新田に聞いたがお前本当は毎日会社に行かなくてもいいんだろう?
……シナリオを考えさえすれば」


友輝ってば昴さんにそこまで話したの?
驚きつつも私は頷く。


「そうですけど……」

「なら問題はない」

「……分かりましたよ……」


渋々ながらも納得すれば昴さんは満足げな顔をする昴さん。
役所の手続きに関しては遅かれ早かれ私がやらないといけない。
だから仕方がないが昴さんの言う通りにするのが賢明だと判断した。


「ん?」

「あ?なんだよ」


そこで重大な事に気が付いた私はポカンと口を上げながら固まってしまう。
頭の中が真っ白になって、ガクガクと震えが止まらなくなる。