大人の恋は波乱だらけ！？

「桜木さん！
一体どうなっているのよ！
引越のトラックが急に来てビックリしたじゃない！！」


頭から角が出ているのではないか、というくらい怒っている中年女性は大家さんだ。
それもそのはず、何の連絡もなく急に引っ越すなんて夜逃げ以外はそうそうないだろう。
私だって急な展開についていけないというのに……。


「すみません」


とりあえず頭を下げれば更に怒鳴られる。


「謝罪じゃなくて説明をして頂戴！！」

「すみません大家さん」


困り果てていた所にやって来たのは昴さんだった。
車に何かを取りに行くと言って、急にいなくなってしまうから心細かった。
彼が戻ってきた事に安堵のタメ息を吐けば、昴さんはポンと私の肩を軽く叩いた。


「僕が説明するよ」


そう言って営業スマイル並みの爽やかな笑顔を大家さんに向ける。
私の肩を軽く引き、昴さんは大家さんの前に立つと申し訳なさそうな声を出しながら『すみません』と頭を下げていた。


「あ……貴方は……？」

「僕は桜木 葉月さんの恋人の新條 昴です」

「こ……恋人……？
あ……貴方には関係ないわ……私は桜木さんに話を聞いているのよ」


大家さんはそう言っているが、真っ赤な顔をしながら昴さんを見ていた。
まあ、これだけ格好良ければ見惚れもするだろう。
昴さんの容姿は若い女性だけではなく、幅広い年代の人にも効果的なのだろう。
感心していれば昴さんは『いえ……』と弱々しく呟いた。
顔は見えていないが子犬みたいな顔をしているに違いない。
だって大家さんは、ぽーっと昴さんを見つめているのだから。
これが漫画だったら目がハート状態になっているだろう。