大人の恋は波乱だらけ!?

「昴さん」


思ったより上手に呼べた事に自分でも驚いてしまう。
恥ずかしさあまり噛むだろうと予想していたから少し拍子抜けだ。
そう思いながら彼を見れば驚きを隠せずに『えっ』と声を漏らしてしまった。
だって新條さんの横顔が紅く染まっていたから。


「どうしたんですか新條さん!?」

「ど……どうもしねぇよ!
それより苗字に戻ってるぞ」


慌てながらも怒鳴る新條さん、いや、昴さんの顔はまだ紅く染まっている。
もしかして照れているのだろうか、そう思ったがそんな訳ないと首を軽く振った。
女性に名前で呼ばれる事に慣れているみたいだったし彼がそんな事で照れるとは思えない。


「……何見てるんだよ。
気が散るからあっち向いていろ」

「……はい、分かりました!」


不機嫌そうなに眉を顰めながらも恥ずかしそうな顔をする昴さんを見ると心が温かくなる様な気がした。
口も悪いし、性格も良いとは言えないけど……。
それでも爽やかな笑顔を浮かべる昴さんよりこっちの昴さんの方が断然いいと思う。


「何笑ってんだよ」

「別に何でもありません!」

「……変な奴」

「それはお互い様です!」


そう言えばフッと小さな笑い声が聞こえてくる。
バレない様に彼の方を見れば、昴さんは柔らかい笑みを浮かべていた。
その笑顔を見ると何故か胸が熱くなっていく。

彼の本当の笑顔を知っている人がどれだけいるかは分からないけど……。
私は数少ないうちの1人に入っている。
そう思うだけで小さな優越感が胸に広がっていった。