大人の恋は波乱だらけ!?

「私は確かに高梨部長が好きです。
だから彼の為に役に立ちたい、彼の足手纏いになりたくない、その気持ちは強いです」


ぎゅっと新條さんの手を強く握る。
私は話すのが上手い訳ではないから伝えたい事がちゃんと伝えられるかは分からない。
でも、今ココで諦めたら絶対に後悔をする。
そう思い自分が今言える言葉を続ける。


「だけど……公私混同をするつもりはありません。
私が星輝の社員である限り、お客様の期待に応え続けるのが私の仕事なんです。
私が今出来る事は……貴方に頭を下げる事だけなんです」

「……」

「お願いします。
新條さんのお仕事の邪魔は致しません。
差支えがなければ金もお支払いいたします。
だから……」


“協力してください”


その言葉は口から出る事はなかった。
振り払うように離された手。
それは“拒否”を示していているのが明らかだった。


「すみません……私……」


必死過ぎて自分の事しか見えていなかった。
私の存在自体が新條さんにとっては邪魔なんだろう。
こうしている時間があるなら小説の時間にあてたい筈だし、話しを聞いてくれただけでも有難いと思わなければいけない。


「……そんなに協力して欲しかったら……」


帰ろうと思っていた時、新條さんの小さな声がリビングへと落された。
ふいに彼を見れば、無表情で私を見つめていた。
その目には何も映されていなくて、恐怖すら覚える様なものだ。


“逃げなければ”

私の頭が、体が、心が、そう叫んでいた。

でも、恐怖のあまり体が動かない。
そんな私を見つめながら新條さんは抑揚のない声で言葉を放った。