大人の恋は波乱だらけ！？

「それに彼女には2か月という十分な時間を与えたはずだ」

「何が十分ですか！？
慣れない【大人の恋愛】をテーマにしたゲームだけでも大変なのに、もう1作品まで作らせて！！」

「だから言っただろう？
今が大事な時期なんだ、どうせ暫くしたらアイツの作ったゲームなんて需要がなくなる。
そうなる前に搾り取れるだけ搾り取らないでどうする？」


社長は冷めた声でそう言った。
私は社長のご機嫌な姿しか見た事がなかったからか尚更怖く感じた。

人間はココまで変わるんだ。
利用価値がある時はトコトン優しくして、利用価値が無くなったと思ったら一気に突き放す。
ある意味清々しいけど、目の前の光景が受け入れ難かった。


「社長……彼女の事をそんな風に思っていたんですか……？」

「ん……？」

「彼女を単なる道具みたいな言い方……しないで貰えますか……？」


低い声に思わず肩を揺らす。
高梨部長の怒りが私にまで伝わってくるのではないか、そう思えるくらい彼は怒っていた。


「実際にそうだろう？
社員は会社の駒だ、使えなくなったら切り捨てる。
それは当然だろう？」

「切り捨てる……？」

「ああ、使えない駒は会社に損害を与えるだけだ。
桜木君に関してもソロソロ考えなければならないかもしれないな。
【大人の恋愛】くらい考えられないんじゃあ……我が社には必要ない」


ハッキリと言われ私は思わず笑顔を浮かべてしまう。
本当に……怖いな……人間って。

裏表がない人間なんていない。
こういう人を見るとそれが実感出来る。


まあ、社長の言う事は全て正しいのかもしれない。
私は社長の望む成果を出せていないのだから。


だから、私が文句を言う資格なんて無い。
そう思いその場を去ろうと足を動かそうとした。


でも、動かなかった。
高梨部長の言葉が私の動きをピタリと止めたんだ。