「吉澤先生っ!!」
後ろの方でだれかが俺の名前を叫んだけど、それがだれの声なのかすら考えてる余裕がなかった。
気がつけば、俺はゲレンデに向かって周りの目も気にせずロビーを走っていて。
「裕翔?どうしたの、そんな急いで」
通りすがった結衣に不思議そうな顔でそう尋ねられたけど、無視して走り去る。
ここのホテルはスキー場と隣接してるから、ロッカールームを抜けるとスキー場は目の前だ。
勢いよく入り口のドアを開けると、冷たい風が雪と一緒に俺の体に突き刺さるように吹いてきた。
ホテルの中は暑かったから、俺が着ていたのはパーカーで、しかも中は半袖だった。
だけど、寒いなんて言ってられない。
夏本と山本は、さくらのスキー板とスキーブーツだけなかったと言っていた。
つまり、さくらはまだゲレンデにいるということだ。

