さくらの花が舞う頃に





なぜなら、私の手は戸山くんにがっちり掴まれていて、猛スピードで住宅街を走っていたから。



「ちょっ!!戸山くん!?」



手を掴まれながら懸命に叫んだけど、戸山くんは振り向きもしない。
    


ていうか、足速すぎでしょ。



こんなに足が速いんだったら、体育祭の選抜リレーに出ればよかったのに。



戸山くんと一緒に走りながら、そんなどうでもいいことを頭の片隅で考える。



そんなことをしている間にも、戸山くんの足は迷わず進んでいて。



いつの間にか、周りの景色が住宅街から一変している。