「あのさ、嫌いなら別れたいなら言って」


彼女は何を言ってるんだ、とでも言いたげな顔で俺を見た。


そして気付いたのだろう、俺が冗談を言ってるわけではないことに。


彼女の表情が強張る。


ごめん、これ以上怖くて顔見れない


早足で歩いて駅にたどり着く、いつもなら歩調を緩めたりもするけど、今日は息苦しい程だった。


また、なんて言えない。


次があるかも怪しいのに


無言で立ち去ろうとした俺の腕を彼女が引き留めるように掴んだ。


「…なに?」


尋ねた俺になんの返答もせず彼女はか弱い力でグイグイ路地裏を目指す。


ほとんど何も見えないそこでついに彼女が口を開いた。






「…察してよ、手繋ごうとか、抱きしめたいとか…っキスとか!聞かれたら嫌だしか言えないの!私、素直じゃないから」



―――あまりの可愛さに目の前がぐらりと揺れた。


そんなの、反則だ。