体の、力を抜いた部分から順番に、僕が僕で無くなっていく。とてつもない息苦しさと、途方もない拘束感。僕の存在が、どんどん小さくなっていく。
 
それと同時に、体の至る部分が痛みだす。腕の骨と脚の骨、それと肋骨が折れたような激しい痛み。内臓が焼けるように熱い。まるで喉から真っ赤に焼けた火鉢を差し込まれたようだ。
 
胃から食道へと、熱いものが込み上げてくる。何だか凄く鉄臭い。吐いてしまいたい。だが、出ない。軟口蓋まで達したそれは、ふと消えてはまた込み上げてくる。
 
僕はその場で身をよじり、野次馬が一斉に振り返るくらいの恐ろしい唸り声を揚げた。
 
そのままドサリと倒れ込んだ僕の耳に、野次馬の声が遠く聞こえてくる。
 
「…君!いったいどうしたんだ」
「全く!最近の若造はちょっと血を見るとこれだ…」
 
次第に薄れゆく意識の中では、野次馬の罵声が実験音楽の不協和音のように聞こえた。