彼女が、全てを悟ったように僕の横に座って、頬を撫でてくれた。

「ゴメンナサイ…」

僕が言うと、彼女は大きくかむりをふった。

彼女は僕の傍らに横たわった。

僕らは唇を重ねた。

そのまま、流れるように、僕は彼女の心臓に包丁を立てた。

目の前に心臓を刺された人がいるというのに、僕は不思議と痛みを感じなかった。

彼女はクスッと笑った。「仕方ない子ね」と、子供を見守る母親のように。

その瞬間、僕の心臓がズキリと痛んで、鼓動は減速を始めた。

僕らは強く抱き合った。彼女の体温は、いつまでも温かいままだった。



遠く、サイレンが聞こえた。