それぞれの崩壊

ふと目を開けると、また違う場所にいた。

部屋中に並んだ大きな机と、セメダインの鼻を突く臭い。そうか、ここは図工室だ。なぜ図工室なんかに…

僕がそう考えを張り巡らしていると、僕のすぐ隣で、シュッ、シュッという音が聞こえた。

そちらを見遣ると、また例の影がいた。彫刻刀で何かを彫っているようだ。

シュッ…シュッ…シュッ…シュッ…シュッ…


影は僕の方に向こうともせず、ひたすらに木を彫っている。丸まった削り屑が、小気味よいリズムで机に落ちていく。

影はどんどん夢中になって木を彫り続ける。次第に前屈みの姿勢になって、一心不乱に…。

あ、ダメだ!

そう思って影に手を伸ばそうとしたが、遅かった。

次の瞬間には、影の左手の掌に、鋭い彫刻刀が刺さっていた。

僕の掌が熱くなる。ジンジンとした痛みが襲ってくる。

掌を伝う血の流れと共に、僕の感覚はまた闇に吸い込まれていった。