それから少しして、僕は彼女の紹介してくれた心療内科へと向かった。
郊外の、さらに辺鄙なところにぽつねんと建ててある、小さな診療所だった。一階建ての真っ白な建物は、人一人分くらいのブロック塀に囲まれ、鬱蒼と繁った庭木が塀に首をもたせ掛けていた。
その、一種人を拒んでいるような雰囲気に圧され、一瞬僕は入るのを躊躇した。だが、彼女との約束を思い出し、思い切って門をくぐると、重たいドアを開けた。
「すみません」
少し薄暗い廊下に声が吸い込まれていく。どうやら病院の造りは普通の一軒家と同じらしい。玄関からはフローリング張りの廊下が伸びている。もしかすると、家をそのまま使っているのかもしれない。
「…すみま」
もう一度暗闇に呼び掛けようとした僕の目に、廊下の奥から白い影が浮き上がって来るのが見えた。
「いやぁ。申し訳ありません。少し奥に篭っていたもので」
そう言いながらこちらに颯爽と歩み寄ってくる医師らしき人物。薄暗い廊下には似つかわしくない、綺麗に整った口髭と、きちんと切り揃えた髪型に清潔感の溢れた、スラリとした紳士だった。
「どうぞ。そんな所で立っていないで、中にお入り下さい。彼女から話は聞いています。あ、靴のままで結構ですよ。」
そう爽やかな笑顔で気さくに言うと、彼はまた颯爽と廊下に消えて行った。
郊外の、さらに辺鄙なところにぽつねんと建ててある、小さな診療所だった。一階建ての真っ白な建物は、人一人分くらいのブロック塀に囲まれ、鬱蒼と繁った庭木が塀に首をもたせ掛けていた。
その、一種人を拒んでいるような雰囲気に圧され、一瞬僕は入るのを躊躇した。だが、彼女との約束を思い出し、思い切って門をくぐると、重たいドアを開けた。
「すみません」
少し薄暗い廊下に声が吸い込まれていく。どうやら病院の造りは普通の一軒家と同じらしい。玄関からはフローリング張りの廊下が伸びている。もしかすると、家をそのまま使っているのかもしれない。
「…すみま」
もう一度暗闇に呼び掛けようとした僕の目に、廊下の奥から白い影が浮き上がって来るのが見えた。
「いやぁ。申し訳ありません。少し奥に篭っていたもので」
そう言いながらこちらに颯爽と歩み寄ってくる医師らしき人物。薄暗い廊下には似つかわしくない、綺麗に整った口髭と、きちんと切り揃えた髪型に清潔感の溢れた、スラリとした紳士だった。
「どうぞ。そんな所で立っていないで、中にお入り下さい。彼女から話は聞いています。あ、靴のままで結構ですよ。」
そう爽やかな笑顔で気さくに言うと、彼はまた颯爽と廊下に消えて行った。

