そしてまた君を好きになる






「相変わらず、綺麗ー……」

10年前と同じように両手で水を掬いあげてみる。

「でも、さすがにちょっと汚れたかな……」


水の色の変化。

変わらないように見えても、変わってる。
この町も、あの頃のままではいられない。


確実に、変わっていく。


私が高校生になったように。


思い出溢れるこの場所で。
久々にこの町に来て初めて、私は月日の流れを感じた。



ねぇ、颯くん。
ごめんねの意味も、あのキスの意味も。
私はまだ、聞けていない。


颯くんと出逢った次の年の夏。

同じようにこの町を訪れ、この海に来たけど。
颯くんの姿は、どこにもなかった。


「颯くんって知ってる?」

颯くんが、私が帰る日を知ったように。
狭い田舎なら何か分かるかもしれないと、祖母に聞いてみると。

「そうくん……?どこの、そうくん……?」


言葉が、出なかった。


そうだ。
私は、颯くんの名字も知らない……。


私と颯くんを繋ぐものは、あまりに曖昧で、不確かで。


そう気づいたらまた、涙が出た。