颯くんと会えないまま、祖母の家で過ごす最終日を迎えた。
その日、最後に思い出の場所を見ておきたくて。しっかりと覚えておきたくて。
帰る直前に、海に向かった。
すると…………。
「……っ…………!!な……んで……」
そこには、出逢った日と同じように颯くんがいた。
「こっちにおいでよ」
そして、出逢った日と同じように、微笑んでくれた。
「今日で帰るって偶然聞いて……」
小さな田舎では、情報が入りやすく。颯くんの耳にも入ったらしい。
「凛乃ちゃん。……ごめんね…………」
悲しそうに微笑む颯くんに、胸が張り裂けそうなくらい痛くなった。
「……っ……うっ……ひっ……」
泣き出してしまった私を、颯くんは黙って引き寄せて抱きしめてくれた。
「ごめん。……ごめんね…………」
抱きしめられてるせいで、颯くんがどんな顔をしているのか分からない。
だけどその声は、あまりに悲痛で。
私の気持ちに答えられないことを侘びているんだと思ったら、余計に涙が出てきた。
「うあ……ぁ……うぅー…………」
泣き続ける私を、さっきよりも強く抱きしめた颯くんは言った。
「いつか……必ず…………」
耳元で紡がれる言葉は、あまりに小さく、弱々しく。
必死に神経を研ぎ澄まさないと、聞き逃してしまいそうだった。
「いつか必ず、迎えに行くから…………。だから…………」
“待ってて”
次の瞬間、おでこに颯くんの唇が優しく触れた。
それは微かに震えていた。
そのまま、颯くんはその場を立ち去ってしまった。
「……颯……くん……」
颯くんの言葉の意味も、行動の意味も、分からないまま。
私は自分の町へと帰ったー…………。


