「君は、この辺りじゃ見たことない子だね」
「おばあちゃん家に遊びに来たの!お家はもっとずっと向こう!」
左側を指差して説明すると。
「そうなんだ」
彼はまたもにっこりと笑ってくれた。
「僕の名前は颯!君は?」
「凛乃!」
「凛乃ちゃんは、いくつ?」
「8歳!」
「僕の4つ下なんだね」
「お兄ちゃんは、12歳なんだね!」
「そうだよ!」
ずっと笑顔で話してくれるお兄ちゃんが、好きだった。
それから毎日、海に行くと、いつもお兄ちゃんは先にいて。
私は海に行くのが楽しみになった。
「颯くん!」
「凛乃ちゃん、こんにちは!」
「こんにちは!」
お兄ちゃん呼びをやめ、名前で呼ぶようになったのも、きっと幼いながらに、恋心からきていたんだろう。
毎日、4つも下の私の相手を嫌な顔1つせずに、してくれた颯くん。
そんな優しい颯くんが、大好きだった。
「凛乃、颯くんが大好き!」
「僕も凛乃ちゃんが大好きだよ!」
颯くんのそんな言葉が、そのときは素直に嬉しかった。
颯くんも、本当に私を好きでいてくれてるって、信じて疑わなかった。
だけど、私は本気で颯くんを好きだったから。
だから、気付いた。
颯くんが、気をつかって好きだって言ってくれてることに。
「颯くん!凛乃、本気で颯くんのことが好きなの!だから、颯くんも本当の気持ちを教えて!」
「…………」
必死になって聞く私に、颯くんは初めて困ったように笑った。
「…………颯くん。ごめん。やっぱり何でもないよ…………」
それ以上、颯くんのそんな顔を見たくなくて、気づけばそう言っていた。


