「俺の家、転勤族でさ。ここにも少ししか、いられないんだろうなって、子どもながらに分かってた」
海に目を向けながら颯くんは話し始めた。
「だから、友だちが出来ても、すぐに別れることになるし。傷つくのが嫌で、人と深く関わらないようにしてた」
淡々と話す颯くんだけど、当時のことを思い出して、傷ついているような気がした。
「だけど……、さ」
颯くんは、フッと笑ったかと思えば、こっちを見て微笑んだ。
「凛乃ちゃんは違った。いつも笑顔を絶やさず、俺に話しかけてくれて。一緒にいるのがすごく楽しかった」
本当にそう思ってくれてるんだと思えるくらい、颯くんは優しく微笑んだ。
「好きって言われるのが、嬉しくて。俺もだよって、返してた。でも、それは妹みたいな感じだった」
告げられる真実に、やっぱりとは思ったけど、それでも胸が痛んだ。
「でもさ。凛乃ちゃんに必死になって好きだって言われたときに、その目の強さに、強く惹かれたんだ」
はっきりと真剣な目で話してくれる颯くんから、私は目が離せない。
「自分の気持ちがよく分からなくなって。気持ちの整理が全然出来なくて。俺、相当酷い顔してたんだろーね。凛乃ちゃんに、気をつかわせた」
そんなことないよって、言いたいのに、やっぱり声が出なくて。
私は黙って颯くんを見てることしか出来ない。
「その日、家に帰ったら両親に引っ越しするって告げられてさ。それから準備とかで忙しくなって、海に行けなくなった。その間、ずーっと凛乃ちゃんのこと考えてたよ」
少し照れたように笑う、その意味は何?
颯くんが伝えたいことは、何?
「少しして、偶然凛乃ちゃんが帰るって聞いてさ。嫌だ!って思ったよ。そのとき、初めて気づいたんだ」
強い目に見つめられて、私は動けなくなる。


