「私、進学をやめて、就職したいと思うんです」
しっかり目を見て話すと、2人は息を呑んだ。
でも1番大事なのは、このあと。
「……この町で」
「この町で……!?」
母は大きな声を出し、父は呆気にとられ黙り込んだ。
「本気で言ってるの!?」
「はい。本気です」
もう1度ここに来て、気づいた。
私は、この町が大好きなんだ。
「時代が違うからよく分からないけれど。このご時世、高卒で就職なんて、きっと大変な思いをするわよ」
眉根を寄せる母。
それは私も思っていた。
本音を言うと。
私はずっとやりたいことが見つからなくて。
人に言われるままに行動していた。
今通っている高校だって、家から近いからって理由だけで決めた。
大学進学だって、将来どんな職に就きたいか、考える時間を少しでも延ばすために行こうとしていた。
それもまた、担任に勧められたところに。
何1つとして、自分で決めたことはなかった。
だけど。
ここに来て、初めて、ここにいたいと思えた。
自分の意志で、ここに残りたいと。
「それでも私は、ここにいたいんです」
「……本当に、それでいいのね?後悔しない?」
目を閉じ、少し考える。
「はい。きっと、ここに残らないほうが後悔します」
私が初めて自分で決めたこと。
「それに、お母さんも言ってたでしょ?好きなことじゃないと続けられないって」
進路で悩んでいたときに母が言ってくれた言葉を思い出して、余計にここに残ることを決心したんだ。


