「ねぇ沖田さんてばっ…!」
底力発揮。男の子の腕は振りほどけない位強いと思ってたけど、あまり強くなかった。


息がどんどん上がってくる。ヒールだからか早く走ることが出来ない。
「○○…待ってくれ!」
「嫌!帰って!」
ヒールが折れた。カクカクとする感覚で分かる。追い風でボサボサになった髪が邪魔ですれ違う人々の顔は見えない。正面に回ってきた沖田さんの顔なんてもってのほか。
「○○…移動しよう。」
歌舞伎町の夜は寒い。誰も私なんかを見てはくれないーーーー。
「ーーーーはい。」

喫茶店に入り、テーブルに座る。夜なのにアイスコーヒーを頼む沖田さんは男の人だと実感する。(夜だからなんだよっ!って話ですけど(笑))
「○○の元彼は暴力をふるう人でした。ヤクザなのか知らないけれど貯金を奪おうとしました。警察には相手にしてもらえず、困り果てていたとき沖田さんが現れ、○○を救ってくれました。」
「えっーーーー」
それは私が親友に話した話!なんで、どうして沖田さんが知ってるの?
「佐奈さんがそう言ってたでさァ…○○は無理をして愛していたけど結局振られてしまったと…」
カァァァッと顔が赤くなるのが分かる。自分がどれだけ愚かな人間か、改めて感じる。そして沖田さんはそんな愚かな人間の彼としてーーーー。
「な、 なにが言いたいんですか?私がどんな人間か分かりましたよね。」